猫は去勢しないとどうなる?発情や性格、健康リスクなど気になる噂を獣医師が解説

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日本では雄の飼い猫には去勢手術をすることが一般的です。
去勢しない場合のリスクは、みなさんだいたい想像できるかと思います。一方、去勢した場合の健康リスクなどは、あまり明らかになっていません。

今回は猫の去勢手術のメリット、手術内容、去勢後の健康リスクなどについて詳しく説明したいと思います。

去勢すると「性格がかわる」「太りやすくなる」など巷で噂されていることについて、獣医師として科学的な理由とともに検証したいと思います。

 

去勢手術の実施率

みなさん、日本の環境省が発行している「動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護法)」では、事実上の不妊(避妊)去勢手術が義務化されていることをご存知でしたか。

参考:動物の愛護及び管理に関する法律(第三十七条)
犬又はねこの所有者は、これらの動物がみだりに繁殖してこれに適正な飼育をうける機会を与えることが困難となるおそれがあると認める場合には、その繁殖を防止するため、生殖を不能にする手術その他の措置をするように努めなければならない。

実際の雄猫の去勢実施率は、約60~70%であると考えられています。

全ての雄猫が去勢手術を受けているわけではないのですね。犬では30~40%程度の実施率とさらに低いです。
これは、犬は完全室内飼育や庭でつないで飼育するのが一般的なのに対し、猫はつないで飼育しないため脱走などの心配が大きいからでしょう。

雄猫の場合、妊娠・出産することはないため単独飼育の場合は繁殖行動をとっても飼い主として大きなリスクは負いません。

しかし、自宅周辺の雌猫と交尾をして野良猫が大量に繁殖してしまうことや、多頭飼育の場合は同居の雌猫との間で交尾をしてしまう可能性が高いでしょう。
最近では、多頭飼育で繁殖しすぎたために飼い主が飼育を放棄してしまった猫屋敷などが問題になっていますよね。

飼い主の責任として去勢手術はしっかりと実施することをおすすめします

 

去勢手術とは?

では、日本で飼育されている雄猫の大半が受けている去勢手術とは、いったいどういった手術なのでしょうか。
詳しく説明したいと思います。

去勢手術とは、雄猫の精巣を外科的に切除することをいいます。
精巣は、雄猫を後ろからみると、お尻の下に丸いものが二つ見えますよね。その左右1対(合計2個)ある円形の器官が睾丸(中に収まっているものが精巣)です。
精子をつくる機能と、アンドロジェンという性ホルモンを分泌する機能があります。

猫は季節繁殖動物といって、雄も雌も春(まれに秋)になると発情します。
その発情期に雄猫は同じく発情している雌猫を必死で探します。見つけると交尾をして、その交尾が刺激となって雌の卵巣から排卵が起こり、そこに雄猫が注入した精子がたどりついて受精が完了します。

こういった発情及び交尾行動は、雄も雌も全て性ホルモンが支配しています。そのため、精巣を摘出すれば発情行動が起こらなくなります。

 

去勢手術のメリット

このように、去勢手術は、同居している雌猫や自宅周辺の野良猫を不要に妊娠させないために必要なものです。

しかし、去勢のメリットはそれだけではありません。

 

■精巣および性ホルモンによる病気が予防できる

精巣があると、精巣腫瘍などの病気を発症することがあります。

また精巣から分泌される性ホルモン「アンドロジェン」の影響で前立腺肥大が起こることもよく知られています。精巣を摘出することによって、こういった精巣や性ホルモンにかかわる疾患を予防することができるのは1つ目の大きなメリットです。
(参考資料:獣医内科学<小動物編>)

 

■発情がなくなり飼育しやすくなる

雄猫の発情行動は、雌よりも強くあらわれ、多くの飼い主さんを悩ませるものです。
下記に雄猫にみられる一般的な発情行動をあげます。

  • マーキング・スプレー行動
    (激しく爪とぎをする、トイレ以外のところで濃い尿をまき散らすなどの行為で、自分が強くて元気な雄であることを匂いでアピールするため)
  • 脱走したり、部屋中を動き回ったり落ち着きがなくなる。
    (発情した雌猫のフェロモンをかいで、探しているため)
  • 大きな声で鳴く。
    (強さのアピールと、雌猫を探しているため)
  • 飼い主に爪を出す、噛みつく、同居猫とケンカをするなど、性格が狂暴化する。
    (発情期は雌猫を探すことに集中しているため、神経質になっているため。また発情しているが交尾できないことによるストレスによることも。)

これらの行動は、ほとんどが発情した猫から放出されるフェロモンと、精巣から放出される性ホルモンの影響で起こります。

去勢することでこのような悩みのほとんどを解消することができます
100%と断言できない理由は、既に一度発情を経験している場合、マーキング・スプレー行動などが癖化してしまっておりなくならない可能性があるからです。

そのため、去勢は生後半年をすぎたらなるべく早く実施することが推奨されているのですね。また、マーキングという行為は、発情期以外の猫でも縄張り意識の強い猫ではよく見られる行為です。

 

去勢後の変化【気になる噂を徹底検証】

ここまで説明してきたように、猫の去勢には「発情行動がみられなくなる」「同居猫や近所の野良猫を妊娠させる心配がなくなる」「病気が予防できる」という複数のメリットがあることがわかりました。

手術も精巣を摘出するだけなので簡便で、費用も1~2万円と高額ではありません。
手術自体は30分程度で終わりますし、入院も不要、猫の身体への負担や精神的なストレスも少なくてすむでしょう。

そのようなメリットの一方で、去勢後に気になる変化があるという噂も耳にします。
例えば「性格がかわってしまった」「太りやすくなった」などは獣医師としてよく相談されることです。

ここからはこのような去勢後の気になる変化について詳しく説明したいと思います。

 

■性格が変わるって本当?

まず、気になっている方も多いと思われる「去勢によって性格が変わるのか?」ということについて考えてみたいと思います。

去勢による最大の変化は、性ホルモンが分泌されなくなることです。
このホルモンのメインの機能は発情などの生殖行動を起こすこと、筋肉などを発達させて雄猫らしい強い骨格を形成することです。そのため、性格に大きな影響は与えないというのが科学的な回答になります。

よく言われるような、もともと狂暴な性格が優しくなるという変化は、やはり発情に伴う狂暴化や交尾できないことに対するストレスがみられなくなったと考えるのが適切でしょう。

 

■太りやすくなる理由は?

続いて、こちらもよく耳にする「去勢すると、太りやすくなる」ということについて考えてみましょう。

何度も繰り返してしまいますが、去勢すると、性ホルモン「アンドロジェン」が分泌されなくなります。
アンドロジェンには、筋肉を増強させるという作用があります。そのため、去勢によって筋肉がつきにくくなると、基礎代謝が落ちます。また、発情や交尾などに伴う体力の消耗もなくなるため、全体的に消費カロリーが低下し、ぽっちゃりとした体形になる傾向があります。

これらは、摂取カロリーを少し抑えるだけで簡単に予防できるので、それほど心配する必要はありません。

 

■【最新の研究】去勢すると「関節」や「骨」の成長が抑制される?

さて、最後に少しだけ獣医師として気になるリスクについてお伝えしたいと思います。
参考文献は少し古いものですが、実は去勢によって靱帯や筋肉、骨などにトラブルを抱える確率が高くなるという統計学的な結果が出ています

これらも、やはり性ホルモン「アンドロジェン」が分泌されなくなることに由来しています。
雄猫は通常、雌より骨や筋肉が発達し、全体的に体格が大きい傾向にあります。それらは「アンドロジェン」の筋肉増強作用によるところが大きいのです。

そのため、去勢猫では良質なタンパク質、カルシウムやマグネシウムなどを十分に摂取させてあげることをおすすめします。
また若い時期はある程度運動できるような環境を用意し、活動的な生活を送らせてあげることもポイントでしょう。
参考文献:Theresa W F et al. Small Animal surgery. 2002

去勢後におすすめのキャットフード<肥満予防>

去勢後の消費カロリーの低下、アンドロジェン不足による筋肉や骨の発達抑制に対応するため、なるべくカロリーを抑えつつも良質なタンパク質をしっかりと含んでいるキャットフードを与えるようにしましょう

カルシウムやマグネシウムなどのミネラルは、サプリメントで補うこともできます。なお、雌は避妊後にエストロジェンという脂肪の代謝を促進するホルモンが分泌されなくなり脂肪が蓄積されやすくなりますが、雄では脂肪の摂取量はそれほど意識する必要はないですよ。

下記は良質な蛋白質と脂質をしっかり含有しており、カロリーが比較的抑えられているキャットフードです。
去勢後~7歳くらいまでの雄猫に特におすすめします。

カナガンキャットフード 蛋白質:33%、脂質:20%、
カロリー:361 kcal / 100 g
シンプリーキャットフード 蛋白質:37%、脂質:20%、
カロリー:370 kcal / 100 g
ナチュラルチョイス(去勢用) 蛋白質:33%、脂質:14%、
カロリー:360 kcal / 100 g

 

去勢後におすすめのサプリメント<関節・骨の強化>

<アズミラ>
カルシウム・ウィズ・ボロン3
カルシウムとマグネシウムが程度な割合で含まれており、効率よく摂取できます。
<現代製薬>
カルシウム・プラス
マグネシウムは尿路結石の原因の1つであまり摂取させたくないという方のための、カルシウムだけのサプリメントです。

 

【猫の去勢手術・まとめ】去勢のメリットとデメリット

雄猫の去勢には、発情行動などによるトラブル防止、疾患予防といったメリットがあることがわかりました。

その一方で、去勢後の性格の変化や体重管理の難しさに悩む飼い主さんもいます。最新の研究では性ホルモンが分泌されなくなることによる骨や筋肉の成長への影響も指摘されています。

猫は非常に繁殖力が強く、多頭飼育や野良猫の繁殖で殺処分などの問題も多いのが現状であり、動物愛護法でも原則「不妊・去勢手術の義務化」が叫ばれています。

去勢後は発情や交尾がなくなることによる消費カロリーの低下、アンドロゲンの分泌がなくなることによる骨や筋肉の成長不足が懸念されていることなど、去勢のリスクもしっかりと理解し、適切な健康管理をおこなえるよう食事等を工夫しましょう

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