猫の避妊手術は必要?術後の体調管理や太りやすくなる理由を獣医師が解説

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雌猫を飼っている方の多くは避妊手術をしていますよね。

現在では飼い猫の雌には避妊手術をすることが一般的です。

そのため、必要性やリスクはよくわからないけれど、みんなやっているし、ブリーダーさんや獣医さんにすすめられたからという理由で避妊手術を受けさせたという飼い主さんもいるのではないでしょうか。今回は猫の避妊手術のメリット、手術内容、術後の体調管理などについて詳しく説明したいと思います。

避妊手術をすると太りやすくなると言われている理由についても、メカニズムから詳しく説明します。

猫の避妊手術とは

避妊手術とは、雌猫の卵巣を外科的に切除することをいいます。多くの場合卵巣と合わせて子宮も切除します。

  • 卵巣:左右1対(合計2個)ある楕円形の器官です。
    卵子を成熟させ排卵する機能と、エストロジェンなどの性ホルモンを分泌する機能があります。
  • 子宮:卵巣からつながった器官で、2本の角が生えたような形をしています。
    それぞれの角の部分が左右の卵巣につながっており、卵巣から運ばれてきた卵子と注入された精子が受精卵となり、子宮内で胎児に育ちます。

猫は季節繁殖動物で、春(まれに秋)になると発情します。

その発情期に雄猫との交尾があると、その刺激で排卵が起こります。発情は卵巣から放出されるホルモンによって起こるため、卵巣を切除することで発情しなくなります。また卵巣を切除するため卵子の成熟・排卵もされなくなり、妊娠しない(避妊)状態になります

すなわち、原則として卵巣を摘出すれば避妊状態になるため、獣医師によっては避妊手術で卵巣のみ摘出する場合もあります。

一方、卵巣がなくなり妊娠しなくなれば、子宮は不要な器官となります。そのため、子宮もまとめて摘出してしまうという獣医師もいます。
子宮は膣を通して外部とつながっているため、細菌が繁殖して蓄膿症をおこすなどのリスクもあるため、近年は卵巣と子宮の両方を切除する手法が一般的です。

 

避妊手術の2大メリット

避妊手術というものが、妊娠させない目的のためだけに行われるのなら「完全室内飼育かつ単独飼育なら必要ないのでは?」と思われますよね。

しかし、そのような飼育条件でも避妊手術を行うことが一般的となっています。
獣医師としても、避妊以外のメリットが大きいため避妊手術を推奨しています。そのメリットについて詳しく説明します。

なお、完全室内飼育にしていても、発情期の猫は本能的に交尾相手を求めて外に脱走してしまいやすくなります。飼い主さんが玄関を開けた瞬間に脱走してしまうということもあります。

脱走による事故や迷子などのトラブルも多く発生していますので、十分に気をつけてください。

 

子宮・卵巣および性ホルモンによる病気が予防できる

先ほど説明したように、子宮は細菌が繁殖して起こる「子宮蓄膿症」という病気があります。

また卵巣腫瘍卵胞嚢腫といった卵巣が原因の疾患もあります。さらに卵巣から分泌されるホルモンによって乳腺腫瘍などの疾患も発症することもあります。

避妊手術によって、こういった卵巣や子宮にかかわる疾患を予防することができるのは大きなメリットの1つでしょう。

(参考資料:獣医内科学<小動物編>)

 

発情がなくなり飼育しやすくなる

先ほど説明したように、卵巣は卵子を排卵するほかにも、エストロジェンという性ホルモンを分泌します。

この性ホルモンによって発情がおこります。個体差はありますが、生後半年をすぎると卵巣が十分に発達し、発情をおこすのに十分なホルモンが分泌されるようになります。
そのため、生後半年をすぎて最初に迎えた春に、初めての発情がみられることが多いでしょう。

猫の発情は、犬のように出血する場合は少なくはっきりとはわかりません。しかし、中には飼育するのが難しくなるほど強い発情を示す猫もいて、飼い主さんを悩ませます。

  • 高い声で鳴く(とくに夜間、眠らず大きな声で鳴く場合も)
  • トイレ以外のところで尿をまき散らす(雄猫に多いですが、雌猫でも見られることがあります)
  • 食欲が低下する

猫では上記のような発情行動が一般的に見られます。

 

この中でも、夜間大きな声で鳴くというのは飼い主さんにとって大きな悩みとなることがあります。
発情期の鳴き声は、止めることができません。鳴き止まない猫に飼い主さんもストレスがたまってしまっては大変です。

飼い主さんと猫が穏やかに暮らすためにも、避妊手術でこういった悩みに遭遇しないよう努めることが大切でしょう。

 

避妊手術後に太りやすくなる理由

ここまで説明してきたように、猫の避妊手術には、「発情がなくなる」「妊娠しなくなる」「病気が予防できる」という複数のメリットがあることがわかりました。

手術自体もしっかりと確率された手法が存在し、短時間で終わるため猫の身体への負担も少ないです。避妊手術が推奨されている理由は、わかっていただけたかと思います。

そのようなメリットの一方で、避妊手術後のトラブルとして「太りやすくなった」という悩みをご相談にこられる飼い主さんもいらっしゃいます
避妊手術後の肥満について気になっている飼い主さんも多いのではないでしょうか。

ここからは「避妊手術後に太りやすくなる理由」について詳しく説明したいと思います。

 

消費カロリーの低下

先ほど、飼い主さんを悩ませる発情行動について説明しました。

この「眠らずに泣き続ける」「歩き回って尿をまき散らす」といった発情行動は、どれも非常に体力(カロリー)を消耗するものだと感じませんか?さらに、発情後、雄猫と交尾をするとさらに大きく体力を消耗します。発情期には食欲が低下することも多いです。

このように野生の猫は、春に大きくカロリーを消費し、その後蓄え、そして出産と哺乳でまた大きくカロリーを消耗するといったことを繰り返しながら生涯を通じて適性体重を維持しています。

避妊手術をすると、発情や交尾、さらに出産や哺乳といった時期がなくなり、トータルのカロリー消費量が減ります。それにも関わらず、避妊手術前と同じカロリーを摂取していると、当然年々体重が増加していってしまいます。

 

ホルモンの影響

避妊手術後に太る理由は、カロリーだけの問題ではありません。
避妊手術によって性ホルモンが生成されなくなり、全身のホルモンバランスが乱れることも太る要因の1つと考えられています。

詳しく説明すると、先ほど発情時期には食欲が低下する猫がいるということをお話しましたが、これは卵巣から分泌されるエストロジェンの影響によるとも考えられています。

エストロジェンは脳の視床下部というところにあるいわゆる満腹中枢を刺激します。そのため食欲が抑えられるのです。さらにエストロジェンは適度な量の場合、脂肪の代謝を促進する働きがあります。
(多すぎても少なすぎても効果はないと言われています。)

避妊手術によって卵巣を摘出すると、当然エストロジェンは分泌されません。そのため上記のようなエストロジェンによるダイエット効果(食欲抑制、脂肪代謝促進)もなくなります。

そのため避妊手術前と比べると太りやすくなる(脂肪がつきやすくなる)と考えられます。

避妊手術後の体調管理のポイント

最後に、避妊手術後の体調管理のポイントについてまとめておきましょう。

術後すぐ、術後~7歳くらいまでの時期、高齢期の3段階に分けてポイントを整理しました。

 

【術後すぐ】術後は傷が完治するまで安静にできる環境を用意しよう

術後すぐは、とにかく感染に注意が必要です。

動物は本能的に傷口を舐めて治療しようとします。しかし、舐めることで細菌が傷口から侵入し、術後であまり食欲がない場合などは免疫力も低下しているため感染が広がる可能性もあります。

とくに多頭飼育の場合は、他の猫が傷口を舐めることや、糞尿が付着する可能性もあり注意が必要です。術後は体調がしっかりと回復し、傷口もふさがって抜糸できる時期になるまで、なるべく隔離して穏やかに生活できる環境をつくってあげましょう

食事量が減っている場合は、消化に良く水分量の多いウェットフードなどを与えても良いでしょう。

 

【術後回復~7歳程度まで】高蛋白・低カロリーのフードを与えよう

術後の回復も順調で、すっかり元気になり食欲も戻ってきた後は、食事管理に注意しましょう。

生後半年ほどで避妊手術を受けた場合は、まだまだ成長期です。猫にとって必要な栄養素はしっかりと補給しつつも、肥満対策としてカロリーが控えめな食事を与える必要があります

下記は良質な蛋白質をしっかり含有し、高蛋白なのにカロリーが控えられているおすすめのキャットフードです。

カナガンキャットフード 蛋白質:33%、脂質:20%、
カロリー:361 kcal / 100 g
シンプリーキャットフード 蛋白質:37%、脂質:20%、
カロリー:370 kcal / 100 g

その他、避妊・去勢手術後用として販売されている製品もありますが、猫にとって最も重要である良質なタンパク質が含まれていない点や、成長期および活動期の猫にとって脂質があまりにも少なすぎだと感じ、おすすめはできません。
(下記の高齢期におすすめしているフードの成分を参照してください。)

たとえ避妊手術後であっても、成長期には質の高いタンパク質と脂質をしっかりと与えてあげるべきだと考えます。

 

【術後7歳~】低カロリー・低脂質のフードへ切り替えよう

7歳をすぎて高齢期になると、運動量も減少してきます。
避妊手術をうけている猫の場合は、とくに肥満に注意して低カロリー・低脂質のフードに切り替えることをおすすめします。

下記は低カロリー・低脂質のキャットフードです。
避妊・去勢手術をうけた猫専用につくられているフードもあるため活用すると良いでしょう。

ナチュラルチョイス
(減量用)
蛋白質:33%、脂質:11.5%、
カロリー:325 kcal / 100 g
サイエンスダイエット
(避妊・去勢猫用)
蛋白質:33%、脂質:10.9%、
カロリー:365 kcal/ 100 g

 

【猫の避妊手術・まとめ】メリットと健康への影響を知って、しっかりと体調管理をしよう!

避妊手術は、疾患予防と発情行動などによるトラブル防止のために広く行われています
避妊手術には多くのメリットがある一方で、術後の健康管理には気を配る必要もあります。

とくに避妊手術により卵巣を摘出すると、発情や交尾、妊娠・出産といったイベントがなくなるため消費カロリーが低下すること、さらにエストロジェンというホルモンによる食欲抑制や脂肪代謝促進効果がなくなるため、全体的に太りやすくなると言われています。

肥満予防のために、やみくもに低脂質で低カロリーのフードを与えるのではなく、成長段階ごとに必要な栄養素を考えながら適切なキャットフードを与えるなど、肥満対策をしつつも健やかな身体を作ってあげるよう工夫してあげましょう。

成長過程毎にキャットフードの与え方については、以下で詳しく解説していますので、併せてごらんいただけますと幸いです。

 

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