【高齢猫の認知症】食事と運動で予防できる?認知症の症状や原因と予防するための4つの工夫

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猫と病気

猫が長生きする時代になり、最近相談件数が増えてきているのが“猫の認知症”に関する悩みです。子猫から大切に育ててきた猫が、高齢になり、認知症を発症してしまうというケースが増えています。
猫の認知症も、人間の認知症と同じような症状を示すため、飼い主は介護に疲れ切っている場合も多いです。長く一緒に暮らしてきた飼い猫だからこそ愛情も深い一方で、ヨタヨタと歩き回って粗相をしたり、夜間に鳴き続けたりといった行動に、精神的に追い詰められてしまっている飼い主さんもいます。

今回、猫の認知症の原因、予防方法、主な症状と対処法について、相談内容をご紹介しながら説明したいと思います。

【高齢猫の認知症】割合や発症リスクなど

人が高齢になると認知症になる可能性があることは、みなさんよくご存じでしょう。

しかし、まさか自分が飼っている猫が認知症になり、その介護をしないといけない日がくるなんて、なかなか想像できないのではないでしょうか。しかしながら、私は獣医師という立場のため、よくお客様や知人からペットの相談を受けます。その中で、最近“認知症”の相談が増えているのです。

認知症は、おおよそ15歳以上の高齢猫にみられます
認知症の猫の割合(認知症の発症率)などは、統計学的データもなく正確にはわかっていません。これは私の見解ですが、認知症は最近急に増えてきた病気というよりは、昔から存在した病気だと考えられます

昔は猫を飼っているといっても、圧倒的に外飼いが主流でした。そのため猫の行動変化には気が付きにくく、高齢になり衰弱してくると、やがて認知症なども発症し、出かけたまま家に戻らないということも多かったようです。これは『猫は自分の死に際は見せない』などと美談で語られることもありましたが、実際は認知症などが原因で家がわからなくなり戻れなかったという可能性が高いと考えています。

そのため、15歳を超える高齢猫のステージにさしかかると、食事量や活動性の低下に加えて、加齢にともなう様々基礎疾患に伴い、脳の機能が低下し神経細胞がおかされることで認知症を発症する可能性が高くなります。

猫を飼っている方は、いつ飼い猫が認知症を発症してもおかしくないという覚悟をもっておきましょう

 

【認知症猫の介護】飼い主さんの声(獣医師への相談内容)

では、ここからは実際に飼い猫の認知症で苦労している方や、対応に戸惑っている方からの相談内容の一部を紹介したいと思います。

<相談①>オス・15歳・室内飼育・多頭(3匹)飼育
以前は、日中は元気に動き回っていましたが、最近は なんだか寝ている時間多くなった気がします。
その反面、夜になると犬の唸り声のような声をあげて、他の2匹が迷惑そうにしています。私も気になって眠れません。
<相談②> オス・13歳・室内飼育・一頭飼い
壁をジャンプして駆け上がっては落ちて床に倒れこむといった、おかしな行動を繰り返していました。
部屋中をうろうろすることもあります。時々、軽い痙攣や失禁もします。気になって家において出かけられません。

 

実際に猫の認知症の症状や、飼い主さんの苦労などを知ると、実感がわいてきましたでしょうか。
子猫の頃から大切に育ててきた飼い猫だからこそ、その症状に戸惑ったり、介護に向き合いすぎて苦労するということが多いようです。

猫の認知症の主な症状は、上の相談にもあるように下記の通りです。

  • 徘徊(部屋中をグルグルと意味もなく歩き回る)
  • 名前を呼んでも反応しない
  • 失禁
  • 鳴き続ける、唸る

高齢になれば、どの猫も発症する覚悟をもつようにと先ほど書きましたが、やはり飼い猫にこのような症状が出ると落ち込みます。
また、夜間に鳴き続けたり失禁したりといった症状は、飼い主さんの負担も大きく、なるべく認知症は発症せずに暮らしてもらいたいと思いますよね。

ここからは、認知症の予防方法についてまとめたいと思います。

 

【高齢猫の認知症】原因など

猫の認知症の原因は、獣医療界でもはっきりとは示されていません。しかし、人間の認知症について研究が進歩しており、猫の認知症の原因や予防方法なども、人間と同様に考えることが一般的です。

人間の認知症は様々な原因が明らかになってきていますが、いずれも『脳細胞が死滅』することで、認知機能が落ちるという病態は共通しています。
脳細胞が死滅する原因については、異常タンパクの蓄積によるもの、脳血管系障害により脳への血液(酸素)供給が滞ることによるもの、などさまざまです。これら異常タンパクの蓄積や、脳血管障害はやはり加齢とともにみられる生理的な変化である場合が多いです。

つまり加齢に伴い、脳細胞が死滅し、認知症を発症する』という病態は猫にも言えることです。

なぜ『加齢』による上記のような生理的反応がみられるかというと、それはいうまでもなく細胞の劣化によるものです。
遺伝子からアミノ酸をつくり、アミノ酸を立体的に組み合わせてタンパク質が作られます。細胞の劣化により、このいずれかの過程でのミスが生じやすくなり、結果異常タンパクが産生される確率があがります。

脳血管障害も、脂質代謝を行う臓器の細胞が劣化し、機能が低下することで余分な脂質が血管内に取り残されるようになります。
血管内が傷つくとその修復を行う細胞も存在しますが、彼らもまた劣化してくるため、ちょっとした傷口の治りが遅れ、そこに脂質が集積しプラークを形成されることも脳血管障害の要因のひとつです。

さらに、血管自体を形成する細胞の劣化による血管の収縮力が低下したり、そもそも心筋細胞の劣化により心拍出力が低下すれば血流が悪くなり脳まで十分な血液が運ばれなくなってきます。

このように、認知症の原因は『加齢に伴う生理的変化』がほとんどで、その加齢変化はあらゆる細胞の劣化によって引き起こされるということです。そして、その細胞の劣化は『酸化ストレス』によって起こります
酸化ストレスは、生きている以上かならず発生してしまうものですが、長年の積み重ね(加齢)や、強いストレスなどでより多くの酸化ストレスが発生し、細胞の劣化が進行してしまいます。

医師であり、著書も多く執筆していらっしゃる『南雲吉則さん』や、他にも有名な医師や研究者の中には「“酸化ストレス”こそあらゆる病気の原因だ」と提言している方も多いです。
さて、少し話がそれてしまいましたが、猫の認知症予防という観点では「脳細胞の死滅を防ぐ」ことがなにより大切であることが分かったかと思います。

ここからは具体的な予防方法について考えていきましょう。

 

【高齢猫の認知症予防】若い成猫のうちからしておくと良いこと

猫の認知症を予防する上で、『加齢』や『脳血管障害』といったものが重要なキーワードであるということをお伝えしました。
加齢は防ぐことができない要因ですので、その他の要因をなるべく減らすことを高齢になる前から心がけることが大切です。具体的には下記のようなことが認知症に限らず、加齢に伴う様々な疾患予防につながります。

■脂質の過剰摂取をさける

子猫や成長期の猫には、成長や活動のために十分な脂質を摂取する必要がありますが、成長期を終え活動量も低下してくるステージでは、脂質の摂取量を控えるようにすると良いでしょう。

しかしながら、脂質は細胞の生成に重要な役割を担いますし、成長期を終えたと言っても日々の活動にタンパク質などの栄養素も必要です。そこで、質の良い脂質やタンパク質をバランスよく含んだキャットフードを選んであげることをおすすめします。

肉メインのキャットフードならば『良質なチキン』を使用しているものや、魚メインのキャットフードが良いですね。

 

■抗酸化作用のある栄養素を積極的に摂取させる(酸化がすすむ成分を摂取させないようにする)

抗酸化作用のある栄養素として、猫に最適なのは不飽和脂肪酸でしょう。

DHAやEPAはオメガ3系の不飽和脂肪酸(αリノレン酸を含む)は、人間用サプリとしてもたくさん販売されています。まさに認知症予防のためのサプリメントで、脳や神経系の老化を予防する効果が期待されています
抗酸化作用だけでなく、血中コレステロールや中性脂肪の割合を調整する働きがあり、血液をサラサラにすることで脳血管障害の予防につながります。

 

■ストレスフリーな飼育環境を与える

飼育環境は、なるべくストレスをためないように工夫してあげましょう。認知症予防という観点からも大切ですが、飼い猫が幸せに暮らせるように、それぞれの猫にあった飼育環境を整えてあげることが大切です。

例えば、猫好きの方はついつい複数の猫を飼育してしまいがちですが、実は猫はあまり多頭飼育に向かない動物です。自然界でも親離れの後は単独で生きていきます。

そのため、多頭飼育する場合は、外に自由に出入りできるようにして一匹で過ごせる時間をつくってあげたり、室内でもそれぞれ一匹ずつお気に入りの場所をつくってあげるなどの工夫が必要です。
ストレスの多い環境では、酸化ストレスが多く発生し、認知症だけではなく様々な疾患の発症リスクが高まりますので、猫の福祉という観点からも注意した方が良いですね。

 

■食事量や活動量の低下を防ぐ

最後は、やはり子猫や若齢猫だけでなく、成猫~高齢猫になっても適度な運動をさせることが重要です。

運動することで食事量も落とさず、結果的に細胞の劣化を防ぐことにつながります。あるいは猫の運動量低下のきっかけとして『肥満』も大きな要因の1つです。
猫は犬のように毎日の散歩を日課にするということはないですので、飼い主が意識して運動させることが重要です。1日数回は遊んであげたり、猫が好きな飛んだり、登ったりできるキャットタワーなどを設置してあげるのも良いでしょう。

また、先ほどストレスを軽減する方法にもかきましたが、やはり完全室内飼育よりは外に自由に出られる方が猫の健康面でのメリットは大きいです。
周囲の住宅や交通事情によって外飼いが難しい場合も多いかと思いますが、最近は猫にリードをつけて散歩している方もいらっしゃいます。

賛否両論ありますが、健康のために考えてみるのも一つの策ではないでしょうか。

【高齢猫と認知症】まとめ

高齢猫の認知症は、飼い主の介護の負担も大きく、獣医師としてよく相談を受けることの1つです。

猫も人間と同様に、加齢に伴い脳細胞が死滅していき『認知機能の低下』を起こします。発症率など統計学的なデータはないですが、昔から高齢猫では一定の割合で発症していると考えられ、みなさんの飼い猫もいずれ高齢になれば認知症を発症するという覚悟はもっておきましょう。認知症の原因は『加齢(酸化ストレス)』や『脳血管障害』と考えられています。

高齢になる前にできる予防策や、認知機能の低下がみられ始めた初期の対処法としては、

  1. 脂質の過剰摂取をさけること
  2. 抗酸化作用のある栄養素を摂取させること(酸化作用のあるものをなるべく摂取しないこと)
  3. ストレスフリーな飼育環境を用意すること
  4. 運動量の低下を防ぐこと(肥満を予防すること)

が大切です。

 

また、飼い猫が認知症ではないかと気になる方は、一人で介護を抱え込まないためにも動物病院に一度相談してみることをおすすめします。

動物病院は、重病のときだけ連れていくところではなく、普段から気軽に相談できる場所としてお付き合いをしておくと安心ですね。

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