ビートパルプは家畜のエサ!繊維が豊富?肉食動物の猫には向かない理由

キャットフードに含まれている原材料の中に“ビートパルプ”というものがあります。

もちろん全てのキャットフードに含まれているわけではなく、一部の比較的安価なキャットフードによく見られます。

“ビート”とは別名『甜菜』や『砂糖大根』と呼ばれる砂糖のもとになる農作物で、日本では主に北海道で作られています。その搾りかすを“ビートパルプ”といい、一般的に家畜のエサとして利用されています

 

肉食動物である猫の食事(キャットフード)に“ビートパルプ”が含まれている理由は、栄養面というより、キャットフードの原材料のカサ増しの役割が大きいでしょう。
肉食動物の猫にとって最良の食事は良質な動物性たんぱくを多く含んでいるものであることは言うまでもなく、ビートパルプが含まれたキャットフードは獣医師としてあまりお勧めできるものではありません

ビートパルプとは?

北海道で獣医学を学んだ私は、“ビート”ときけば『砂糖』と『牛』をイメージします。家畜のエサとして完全に定着している“ビートパルプ”が、まさかキャットフードにも含まれているということを知った時は正直驚きました

というのも“ビート”というのは広大な北海道の農地で大量生産されている農作物の一つです。少し赤みがかった大根(かぶ)のようなものが地中にでき、そこから砂糖がつくられます。

北海道では砂糖をつくるために搾り取った後のビートのカスを、乾燥させて緑色のペレット状にしたものを家畜のエサとして与えるのが一般的でした。北海道はビート農家と酪農が隣同士で存在するような土地ですから、ビートはまさに余すことなく使用できる良い作物と考えられていましたね。

そんな“ビートパルプ”を草食動物である牛や羊といった家畜のエサとして使用することに関しては十分理解できますが、どうして肉食動物である猫の食事にまで含まれているのでしょうか。

ビートパルプについて詳しく見ていきたいと思います。

ビートパルプに含まれる成分と猫の健康に与える影響

農作物の一つ“ビート”の絞りかすである“ビートパルプ”が、家畜のエサとして与えられていることについては明確な理由があります。
ビートパルプは干し草などに比べると栄養価が高く、大きな体の乳牛たちが効率よくカロリーを摂取することで、産乳量が増えるといった良い効果がみられるからです。

では、キャットフードにビートパルプが含まれていることにも、猫の健康に何らかの良い影響があるからなのでしょうか。ここからは“ビートパルプ”の化学組成や猫の健康への影響について考えていきます。

 

ビートパルプの化学組成(参考資料:日本飼料標準乳牛2017年版)

ビートパルプの化学組成は表のとおりです。

粗蛋白質 9.6
粗脂肪 1.0
可溶無窒素物 64.3
総繊維(細胞壁物質) 65.5
ペクチン 15.9
可溶化養分総量 76.0

 

先ほども書きましたが、ビートは農作物であり、当然ですが粗蛋白質(9.6%)や粗脂肪(1.0%)の含有量は極めて少なく、大部分が繊維であることがわかります。

総繊維がなんと全体の65.5%を占めています。さらに、総繊維のうちペクチンと呼ばれる繊維が15.9%も含まれていることがビートパルプの大きな特徴です。このペクチンは、牛などの草食動物の体内では非常に消化性が高い物質であり、そのため栄養価が高くなるということです。

 

肉食動物である猫の健康に与える影響

では、肉食動物の猫にとってもビートパルプは何か健康に良い効果があると考えられるでしょうか。これは、残念ながら全く健康への効果は期待できません

まず肉食動物の猫の体内では、牛のように食物繊維を消化分解してエネルギーとして活用することはできません。消化できない一方で、繊維が豊富に含まれているということから便秘になりやすい猫の便通改善などに効果があると考えられたりもするようですが、非常に残念なことにビートに含まれる繊維は不可溶性です。
そのためむしろ腸内にとどまりがちで、どちらかというと便を硬くさせるといった影響の方が懸念されます

こんな性質を逆手にとり、室内飼いをしている飼い主さん向けに、飼い猫の便を“柔らかくて臭いがきついもの”から“コロコロとしてあまり臭いがないもの”に!なんていう口コミで、ビートパルプを多めに含んだペットフードが売られている・・・といった裏話なども耳にすることがあり、獣医師としてはとても切なくなりますね。

 

ビートパルプがキャットフードに含まれている理由

肉食動物の猫にとってビートパルプを摂取するメリットは何も思いつかないということを述べさせていただきましたが、それでもキャットフードに“ビートパルプ”が含まれている理由は何でしょうか。

ここからは私見ですが、穀類を加える理由と同様で、キャットフードのかさ増しの役割が最も大きな理由ではないかと考えられます。
というのも、“ビートパルプ”は本来の目的である砂糖を作るために搾った後の「残りかす」が原材料なわけですから、非常に安価であることはもちろん、家畜のエサとして流通していることから利用しやすいです。

そのため安価なキャットフードなどでは、コストをさげて量を増すために使用されていると考えられます。

 

現在、飼い猫にビートパルプ入りキャットフードを与えてしまっている場合の対応

肉食動物である猫のキャットフードに含まれている“ビートパルプ”は、猫の健康を考えて使用されているというよりは、安価に量を増やすために使用されている可能性が高いことがわかりました。

では、もし現在大切な飼い猫に与えているキャットフードの原材料に“ビートパルプ”が含まれていた場合はどうすればよいでしょうか。

 

① 飼い猫の便や嘔吐についてよく観察しよう

ビートパルプがどの程度含まれているかにもよりますが、万一飼い猫に便異常や嘔吐が頻繁に見られるようなら、キャットフードに含まれている“ビートパルプ”が原因の一つかもしれません。

先ほども少し触れましたが、ビートパルプに含まれる繊維は不可溶性です。肉食動物にとっては非常に消化に悪い食べ物ということになります。
そこで飼い猫の便が硬くなっていないか、消化不良などで頻繁に嘔吐をしていないかなどをよく観察し、少しでも気になる点があればキャットフードをビートパルプなどの粗悪なものが含まれていないものに変えたほうが良いでしょう。

 

② その他の原材料もしっかりと確認しよう

ビートパルプだけでなく、キャットフードに含まれているその他の原材料にも着目してみましょう。
もし原材料の一番目に『穀類』などが書かれている場合は、明らかに肉食動物の猫の健康には適していません。

穀類やビートパルプの占める割合が多くなると、圧倒的にたんぱく質が不足してしまいます。とくに1歳前後の成長期の猫には良質なたんぱく質が必須です。

できることならグレイン(穀類)フリーのものやビートパルプが含まれていないキャットフードに変えることを検討しましょう。

コストを下げたい場合は、穀類やビートパルプは含まれているとしても、原材料の上位には『チキン』や『サーモン』といった良質なたんぱく質を含んだ食材が記載されているものをなるべく選ぶようにしましょう。

 

例として、ビートパルプ入りキャットフード2種の原材料をのせておきます。

◆アイムス(インドア成猫用 チキン)

  • 原材料:肉類、トウモロコシ、植物性たんぱく質、大麦、鶏脂、家禽類、ビートパルプ・・・

 

◆ニュートロ(室内猫用 アダルト チキン)

  • 原材料:チキン生肉、乾燥チキン、粗挽き米、エンドウタンパク、玄米、鶏脂、アルファルファミール、ポテトタンパク、ビートパルプ・・・

どちらも、原材料に“ビートパルプ”が含まれています。

原材料の一番目(最も含まれている割合の多いもの)に“肉類”や“チキン”と書かれているため、それほど粗悪なキャットフードとは言えないでしょう。

しかしながら、上の『アイムス』は2番目以降に、穀類や植物性のものが続きます。ビートパルプと合わせて、肉食動物の猫の胃腸にはなかなかの負担になるものが含まれていることがわかりますね。

一方、『ニュートロ』は上位2品目をチキンが占めており、その後も穀類の中では最も消化しやすい米が使用されています。良質とは言い難いですが、比較的猫の健康のことを考えた原材料で作られていると言えるでしょう。

 

ビートパルプが猫の健康に与える影響

低価格のキャットフードの中には原材料に“ビートパルプ”が含まれているものがあります。

“ビート”とは砂糖のもとになる農作物で、その搾りかすである“ビートパルプ”は家畜のエサとして利用されています。
キャットフードに“ビートパルプ”が含まれている理由は、ビートパルプの化学組成などから考えて、栄養面や健康へのメリットを期待して含有されているというより、キャットフードのカサ増しの役割を担っていると考えられます。
肉食動物の猫にとって最良の食事は、良質なたんぱく質を含んだ消化によいキャットフードです。

もし今ビートパルプ入りのキャットフードを与えている場合は、飼い猫の健康状態や、キャットフードの原材料をしっかりと確認し、少しでも気になることがあれば“ビートパルプ”などの猫には向かない原材料が含まれていない高たんぱくの良質なキャットフードへの変更を検討しましょう

キャットフードの具体的な選び方は以下のページで詳しく解説していますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

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